山菜料理 出羽屋

  • 山ノオト
  • 本を選ぶ、ということ。山の文庫便が生まれるまで

本を選ぶ、ということ。山の文庫便が生まれるまで

山の文庫(ふみくら)より

2026.02.04

まったくの手探り状態から始まった
「山の文庫便」の実現。
わたしたちにとっては、新たな挑戦でした。


本が好きで、また昔取った杵柄として
図書館司書の資格は有しているものの、
これまで特に活かす機会もなかった
企画・広報スタッフのわたし。


同じく本好きの頼もしい存在である
若女将に導かれ、激励を受けながら
具現化に挑戦してみたものの、
本を選び、お届けするということは
単純なようで、なんと難しいのだろうと、
暗中模索にも似た思いを抱えていました。


ひとの好みは、好きな本のタイプも千差万別。
わたし個人の嗜好ではなく、
お客さまが期待される「出羽屋らしさ」を
きちんと映した視点で選ぶ必要があります。


そんな中、本を選ぶ相談に乗ってくださり、
企画段階から心強い存在となっていたのが、
ここでご紹介する あわい書店 さんです。


出羽屋のある西川町間沢から、
寒河江川を辿るように車で約25分。
山形県のほぼ中央部に位置する
河北町。
あわい書店は、この町にあります。


お店を開いて約一年。
現時点では店舗を持たないスタイルが特徴で、
事業所への直接販売や、
毎月第三土曜日に町の公共施設・どんがホールで
開催されるマルシェなど、
イベント出店を主軸に活動されています。


「本を真ん中に、ひとの集まる場所をつくりたい」

そうお話しくださった言葉のとおり、
机に本を並べてお店を開くと、いつも
老若男女問わず、多くの人が
興味深そうに本を手に取る姿が見られます。


小さなお子さんが仕掛け絵本に触れて喜び、
その様子を、周囲に居合わせた大人たちが
目を細めて見守る――
そんな場面に出会うことも少なくありません。


地域や世代の垣根をやさしく越えながら、
穏やかに、けれど確かに、
ひとの輪を広げている本屋さんです。


河北町は、江戸時代から明治初期にかけて
最上川舟運における紅花の集散地として栄え、
町の中心部・谷地地区は
かつて「谷地千軒」と称されるほどの賑わいを
見せていました。


県内では山形に次ぐ商業地として発展し、
紅花交易を通じて流入した上方文化の影響も受け、
狭い町ながらも、特色ある豊かな文化が
育まれてきた地域です。


一方で、他の町と同様、
人口減少の波には抗えず、
かつて多くの店が軒を連ねた商店街も、
今ではシャッターの下りた場所が目立ちます。
書籍を取り巻く環境も大きく変わり、
急速なデジタル化の影響もあって、
中心街のアーケード内にあった書店や、
高校の近くにあった書店も、
残念ながら姿を消してしまいました。


町から、文化の礎とも言える
「本屋の灯」を絶やすまいと、
一念発起されたのが、
あわい書店の店主・
真田伸夫 さんです。

地域の方々、そしてわたしたちも、
親しみと敬意を込めて
「真田先生」とお呼びしています。


もともと小学校の理科の先生で、
旧・川土居小学校にも勤務されており、
西川町や出羽屋のことも
よくご存じでいらっしゃいます。


現在も臨時教員、また社会教育士として
教育に携わりながら、書店を営まれています。


本を選ぶにあたり、
学校の先生としてのご経験を活かし、
幅広いジャンルから提案をいただきました。


しかも、そのすべてにおいて
出羽屋らしさを尊重してくださるため、
最初は掴みどころのなかった
文庫便の方向性も、次第に輪郭を持ちはじめました。


振り返ってみれば、企画当初から
真田先生には、随分と助けていただいたと思います。


ときにわがままになってしまう
わたしたちの意見にも、
穏やかに耳を傾け、寄り添ってくださった結果、
初回の文庫便では
ツバキ文具店
みなさまへお届けすることができました。


今回の文庫便では、大変ありがたいことに、
山形から遠く離れた沖縄の地から
ご注文くださったお客さまもいらっしゃいました。


本を介してご縁が生まれ、
心の距離が少し縮まる。
そんな瞬間を思うと、胸が躍ります。


あわい書店の「あわい」とは、「間(あわい)」。
「ひととまちのあわいに本を」が、
お店のコンセプトです。


お客さまと出羽屋のあわいをつなぎ、
わたしたちを結ぶ一冊を
ともに選んでくださる本屋さんがあることで、
山の文庫便は、これからさらに
面白いものになっていきそう。


次回も、どうぞお楽しみに。