山菜料理 出羽屋

読む、味わう、書いてみる。山の文庫便

山の文庫(ふみくら)より

2026.02.03

山の宅配便の新しいシリーズのひとつとして、
このたび「山の文庫便」をリリースし、第一弾をお届けいたしました。


こちらは、本棚のある出羽屋のラウンジで
ゆったりと過ごすような、くつろぎの時間を
ご自宅でも味わっていただけたら──
そんな思いから生まれたものです。


わたしたちのおすすめとして選んだ本を一冊。
一緒に味わっていただきたい焼き菓子とお茶。
そして、出羽屋オリジナルの「紙もの」商品。
それらを組み合わせたセットとなっています。


出羽屋の「食」でもなく、「泊」でもない。
「雰囲気」をかたちにしてお届けするというのは、
わたしたちにとっても新しい挑戦でした。


反応にちょっぴりどきどきしながらも、
箱を開けたときのみなさまの表情を思い浮かべ、
かたちにしていく工程はとても楽しく、
無事にお届けできたことに、ほっとしています。


焼き菓子は、出羽屋のある西川町のお隣、
鶴岡市のイタリア料理の名店
gira e gira さんの特製です。


お店でお菓子を担当されている
川嶋朋子さんにご協力をお願いしました。


立春の頃にお届けすることから、
これから迎えるバレンタイン・デー、
そして春を感じられるものを、とリクエストしたところ、
「つや姫米粉とココアのサブレ」と
「ふきのとうクッキー」という、
素敵なかたちで応えてくださいました。
まずは、心ときめく見た目の可愛らしさに。
そして口にしたときの、はっとするおいしさに。
少なくとも二度、目を見張りながら、
春の目覚めをご体感いただけることでしょう。


出羽屋の各客室にご用意しており、
お泊まりのお客さまからもご好評をいただいている
月珈琲さんのドリップコーヒー
「DEWAYA Blend」と合わせて、
春に思いを馳せるコーヒータイムをお楽しみください。


そして、山の文庫便を文庫便たらしめる存在。
今回、出羽屋としてセレクトした本は、
小川糸さんの『ツバキ文具店』です。
これまで『糸暦』や『今夜はジビエ』などの著作で
出羽屋のエピソードを綴ってくださるなど、
ご縁の深い、山形ご出身の糸さん。


ファンの方が、いわゆる“聖地巡礼”として
出羽屋を訪れてくださることもあり、
わたしたちも大好きな作家さんです。
初回の文庫便でご紹介できることを、
心より嬉しく思っています。


鎌倉で小さな文具店を営むかたわら、
手紙や書類の代筆を行う「代書屋」という
少し変わった仕事も請け負う主人公・鳩子。


依頼人の思いを汲み取り、
次々と舞い込む難題にも、
心を尽くして応えていきます。


古都の美しい季節の移ろいを背景に、
「手紙」というツールを通して
人と人との心が結ばれていく過程が、
丁寧に描かれた作品です。


墨をすり、ガラスペンをインクに浸す。
「書く」ことに誇りを持ち、
真っ直ぐに向き合う中で
自分の心をも整えていく鳩子の姿。


葛藤を抱えながら祖母の後を継いだ道を、
自ら選び取った人生として受け止め、
確かなものにしていくその姿に、
頁を繰るうち、自然と背筋が伸びる思いがします。


これを書いているわたし自身は、
残念ながら書道の心得はないのですが、
以前、書道の先生から
「書くというのは、余白も含めてのことなのよ」
と教えていただいたことがあります。


確かに、文字をバランスよく書くというのは、
言い換えれば、書かない部分を
どう残すかということ。


それはきっと、心や頭も同じなのだと思います。
忙しい日々のなかで書き込みが増えていくところを、
どのように整え、どのように余白を残すか。


お手本どおりに書くことも大切ですが、
ときには、あえて詰めてみたり、
少し右寄りにしてみたり。


その日その日の自分の感情に合わせて
余白の設け方に幅を持たせることが、
自分自身のバランスを保つことにも
つながっていくのかもしれません。


読書が好きな方はもちろんのこと、
忙しい日々を送る方にこそ、
腰を落ち着けて本を開き、
心に余白をつくっていただきたい。


そんな思いから、
この本を軸にした文庫便といたしました。


また、糸さんの巧みな描写に導かれ、
鳩子が選び抜いた筆記用具や紙の数々に触れるうち、
誰かに手紙を書きたくなる方も
きっと多いはずです。


同封した出羽屋オリジナルの一筆箋は、
いつも出羽屋の世界観を
やわらかな眼差しで描いてくださる
なかじま図案室さんのイラストをあしらったもの。


サイズも用途も、メモ以上・便箋未満。
気負わず、楽しんでいただけると思います。


気軽に、でも気持ちは込めて。
大切な方へ、あるいは久しぶりに
言葉を交わしたくなった方へ。


代書ではなく、あなたの字で一筆を。
どうぞ、余白の部分も楽しんでくださいね。


山の文庫便は、年四回を予定しています。
みなさまに手紙を書くような気持ちで、
これからも真心を緩衝材にして、
大切にお届けしてまいります。