山菜料理 出羽屋

森と畑に囲まれた小さな工房から

季節のたより

2025.08.15

北海道・七飯町「塒(ねぐら)」の四季と松浦喜英さん

北海道・七飯町のはずれ。

森と畑が広がる静かな土地に、小さな工房「塒(ねぐら)」があります。

広々とした庭の向こうには、雄大な駒ヶ岳。
春には雪解け水の音とともに、ふきのとうや水仙が顔を出し、
夏は紫色のラベンダーが風に揺れます。
秋は山全体が紅葉色に染まり、
冬は一面の雪原がしんと静まりかえり、工房を包み込みます。

この自然の中で暮らしているのが、陶芸家・松浦喜英(まつうら よしひで)さん。

庭ではヤギや鶏がのびのびと歩き回り、
畑には奥さまが育てた色とりどりの野菜や花が咲き誇ります。
一匹のヤギからはじまったご縁

出羽屋と松浦さんの出会いは、かれこれ5年前のこと。
ある日、お客様から一匹のヤギの置物をいただいたのがきっかけでした。


その素朴で愛らしい姿に心惹かれ、作り手を調べると、それが松浦さんだったのです。

それからお互いが行き来を重ねるうちに、
器だけでなく暮らしや価値観にも惹かれ、距離は自然と近づきました。

今では、出羽屋のシェフズテーブルでお出しする前菜の器として欠かせない存在に。
山菜や旬の恵みが一堂に並ぶあの一皿を、やさしく、そして凛として支えています。お客様からも「料理がいっそう映える」と好評です。
暮らしそのものが器づくりの源

5月末、わたしたちがお邪魔した日は、松浦さん自ら沼エビ漁に案内してくれました。


ご自身を「陶芸家であり、漁師でもあり、ヤギを飼う人」と笑う松浦さんにとって、こうした暮らしのすべてが器づくりのリズムを形づくる大切な要素です。
朝は動物の世話から始まり、畑を見回り、気分がのったらろくろを回す。日々の営みと制作の時間が、静かに混ざり合っています。

「同じ形でも、春と秋とでは違う器になるんです」と松浦さん。
四季の移ろいは、そのまま器の色や肌合いに映り込みます。

春はやわらかな乳白色、夏は透きとおるような青、秋は落ち着いた土色、冬は雪景色のような白。派手さはないけれど、手にした瞬間の安心感と、料理をすっと引き立てる控えめな存在感があります。
それは、松浦さんの穏やかな笑顔をおおらかな人柄が、そのまま形になったようです。
世界にひとつの出会い

松浦さんの器はすべて手づくり。ひとつとして同じものはなく、釉薬のかかり方や色合い、土の表情もわずかに異なります。
だからこそ、手に取ったその瞬間が出会い。暮らしの中で使い込むうちに、より深い風合いをまとっていきます。
数量も限られ、次に同じものに出会えるとは限りません。


出羽屋では松浦さんの作品をご用意しています。淡い釉薬とやわらかな曲線が、山菜の彩りを引き立てます。北海道の風や光、松浦さんの暮らしと息づかいがそのまま詰まった器を、ぜひ日々の食卓に迎えてください。