山菜料理 出羽屋

本の扉を開くとき

山の文庫(ふみくら)より

2025.06.15

スキーやスノーボードが楽しいスノーアクティビティ。
春から秋にかけては、山へ足を運び、トレッキングやハイキング。
この初夏には、町内に新たに、カヌーや足漕ぎカヤックを楽しめる水辺のスポットも誕生し、
自然の恵みに包まれたこの町で、
心と身体を動かすさまざまなアクティビティを楽しみに出羽屋を訪れてくださるお客さまも、少しずつ増えてまいりました。


出羽屋にご宿泊いただくお客さまの中にも
「この土地だからできる体験を」と、
西川町の自然と触れ合う時間を楽しみにされている方が多くいらっしゃいます。


そんな中で、私たちはもうひとつの“体験”をそっとご用意できたら、と考えるようになりました。
それは、心を動かす静かなアクティビティ。
本との出会いを通して、深く満ちていくような時間。
読書を楽しめる“山の文庫(ふみくら)”という、新たな図書スペースの構想です。

もともとラウンジに設えた書棚には、ひそやかに「山の本棚」という名をつけておりました。
山や森、食や旅にまつわる本。
ワインやインテリア、暮らしについての本。
ときには、心がふっとほどける漫画も。

2023年に復刊した『出羽屋の山菜料理』もそこに並び、
旅のお供として楽しんでくださる方が多くいらっしゃいます。


ご滞在中に読んだ感想をお話してくださったり
「こういう本も好きなんです」とそっと教えてくださったり。

本を通して生まれる、思いがけない会話の余韻もまた、私たちのよろこびです。

それならば、と。
今ある本棚をさらに充実させると同時に、
より広い視野で選んだ本を集め、
ゆったりと本に向き合える空間を設けてみたいと、私たちは考えています。


ここ西川は、バスの本数も多いとは言えず、
お帰りの時間まで館内で過ごされるお客さまも少なくありません。
けれど、頁をひらけば、そこには日本各地、世界各国、
そして想像の中でしか出会えない物語の世界が広がっています。


どこかに出かけるよりも、今日は出羽屋の中でのんびりと。
そんなふうに過ごしたいと思ってくださる方にも、
あるいは、雨の気配に旅の予定を変更せざるを得なかった方にも、
本のある時間は、きっとそっと寄り添ってくれるはずです。


「普段はあまり本を読まないけれど、気づけば夢中になっていた」
「予定が変わってがっかりしていたけれど、本と過ごす静かな午後も悪くなかった」
そんなふうに、想像していなかった旅の記憶がひとつ、心に刻まれたら――。


まだ形のない、空想の文庫。

山の本棚から、山の文庫(ふみくら)へ。

本と旅する時間を、そっと差し出せるような場所へ。
そんな構想が、今、静かにふくらみはじめています。

Writeen by Sanada