山菜料理 出羽屋

月山のふもとの、ある日

月山のふもとの、ある日

2026.09.29

落ち葉の中に、日差しを受けてつやつやと光る栗が落ちています。

一つ、二つと拾っていると、頭の上から「ぼとっ」と栗が落ちてきます。葉の間で「ガサガサッ」と音がすれば、イガかもしれないと、つい身構えてしまいます。

今年から、私はこの栗林を管理することになりました。

長年手入れをしてきたおじいちゃんとおばあちゃんが、高齢のため管理を続けるのが難しくなり、ご縁があって引き継ぐことになったのです。

栗拾いをしたこともなかった私にとって、初めて迎える秋です。
手入れの相談をしにお二人の家を訪ねると、おばあちゃんが「あがらっしゃい」と迎えてくれます。そしていつも、畑で採れた野菜を使って、ごはんをごちそうしてくれるのです。

料理上手なおばあちゃんが作るごはんは、何を食べてもおいしい。

「今日も0円食堂だよ」
そう言って笑うおばあちゃんの、この言葉が私は大好きです。
食卓では、おじいちゃんが山の話をたくさん聞かせてくれます。
一方で、おばあちゃんも料理の話になると止まりません。おじいちゃんが話をしていても、「そんなこといいから」と料理の話に切り替えてしまうことも。
まるで夫婦漫才をみているようで、思わず笑ってしまいます。

ある日、そんな食卓の中で、西川町のシンボルでもあるブナの話になりました。

「桃栗3年、柿8年っていうだろう。ブナなら“大バカ野郎、ブナ50年”だ」

ブナが一人前になるには長い年月がかかります。
ゆっくり時間をかけて成長するブナの話を聞きながら、早く仕事を覚えたい、役に立ちたいと焦っていた自分の気持ちを振り返っていました。

おじいちゃんの言葉に、ふっと肩の力が抜けました。

「大バカ野郎、ブナ50年」

これからも、ふとしたときに思い出す言葉になりそうです。

この町で暮らし始めた私も、まだ知らないことばかりです。ここで出会う人たちの話に耳を傾けながら、少しずつ季節と暮らしを重ねていこうと思います。
はじめまして、上原梨花です。
この春、実家のある京都から山形県西川町へ移り住み、地域おこし協力隊として活動しています。

この連載では、日々の中で出会った人や季節の風景、何気ない会話などを綴っていきます。
西川町での暮らしを、少し覗いていただけたらうれしいです。